世の中は今、変化の時を迎えています。 その中で私たちには「新しい発想」が求められています。 その発想の方法を学んでいくのがこの「創造性向上学」です。 この講義の中で学び身につける内容は
- クリエイティビティを妨げる3つの要因
- その3つの要因を取り除く方法
- 「カイゼン」を越えるイノベーション手法
- 思いがけない発想を生み出す手法
- 創造性を上げる思考法の6ステップ
- 良いアイデアかどうかを見極めるための「5つのC」
- 小さなアイデアをしっかりとした実行計画に育てるための仕組み
などです。 講師は猪俣氏です。
特別講師プロフィール
猪俣潤(いのまた
じゅん) 1972年横浜生まれ。明治学院大学経済学部卒業。 大手進学予備校講師、高校教師を務めた後、渡米。 ウエスタンケンタッキー大学にて修士号取得。 専攻はリーダーシップ論。 現在は、米国現地法人自動車関連メーカーにて、 マネージメントアナリストとして活躍中。
2009/7/29(水)いも虫の話(1)
こんにちは。猪俣です。 これから3ヶ月【創造力向上学】をいっしょに学び 楽しい変化を起こしていきましょう! よろしくお願いします。
テキスト”Think Better”Chapter1のはじめに processionary caterpillarという いも虫の話が出てきます。processionaryとは「行列の」という意味なのですが、 このいも虫はえさを探すとき行列を作ります。先頭のいも虫はえさを探し、 そのいも虫のほかのいも虫たちはついていくのです。
この面白い習性に注目した昆虫学者のファーブルは ある実験をしました。いも虫の行列を直線から円にしてみたのです。すると、どうなったでしょう?
2009/7/30(木)いも虫の話(2)
いも虫の行列を円にしてみると、 いも虫たちは前のいも虫についていって ずっと円状にまわり続けたということでした。さらに興味深いのは 近くにえさがあっても それには目もくれず、 ただひたすら前のいも虫について クルクルまわり続けていたということです。あげくの果てには 飢え死にするものも・・・。
「おろかな虫だな」 と笑ってしまうかもしれません。僕もこの話を読んで おもわず笑ってしまいました。でもよく考えるとこの話は とても笑える話ではないことがわかってきました。だって僕たち人間だって 結構同じようなことをやってしまっているからです。
2009/7/31(金)いも虫の話(3)
前回書いた processionary caterpillar といういも虫の実験結果のようなことが 僕たち人間の中にもたくさんあるような気がします。目的もわからずやっていること。もともとあった目的を忘れて ただ前からやっていることだから ということでやり続けていること。外から見ると 明らかにナンセンスなのに 当人たちはそれに気づかずやり続けていること。
そうした習慣、パターンというのは 一見、楽で効率がよいような感じがします。でも、本当にそうなのでしょうか? もちろんパターン化することによって うまく行くこともあるでしょう。でもいつもうまく行くとは限りません。特に今のように 環境が急速に変化しているときは 古いパターンにしたがっているだけでは 新しい環境についていけなくなってしまいます。
では僕たちは 一体どうしたらいいのでしょうか? それを教えてくれるのが この”Think Better”なのです。
2009/8/10(月)なぜいいアイディアが出ないのか?
「なんかいいアイディアないかなぁ。」こう思ったことはありませんか? 僕はしょっちゅうです。そして、 「いろいろ考えているのに なんでいいアイディアが出てこないんだろう。」 と思ったこともありませんか? 「考える」ということは だれもが毎日していることですが、 ただ「考える」だけでは新しいアイディアは出てきません。なぜか。Henry Fordは
“Thinking is the hardest work there is, which is the probable reason why so few engage in it.”
(p.19)
と言っています。そうです。 考えることは とても大変なことなんです。「今日、何食べようかな。」 くらいのことだったら それほど大変ではありません。でも、 クリエイティブな思考、focused thinking というくらいのレベルでは まさに「頭に汗をかく」作業です。そしてさらに・・・。
2009/8/13(木)クリエイティブな思考を妨げるもの(1)
クリエイティブな思考ができなかった原因、 もっとありました。それは体の仕組みに関係したものです。僕たちの体は エネルギーを最小限に使うように 設計されているそうです。生命を維持するために 必要な仕組みですよね。そして体の一部である脳もまた 同じような仕組みを持っています。
つまり、脳もエネルギーを最小限に使うよう 設計されているということなのです。その例が クリエイティビティを妨げる3つの思考パターンとなるのですが、 このchapterのタイトルにもある Monkey Mind、Gator Brain、Elephant’s Tetherです。
1つ目は Monkey Mind。サルが木から木へ移るように 思考が飛ぶことを Monkey Mind といいます。例えば、このブログを読んでいて “今日の晩御飯なんだろう?”とか 思考がまったく違うところへ飛んだりすることです。これは誰にでも経験がありそうなことですね。 僕も、よくあります。
この Monkey Mind は ブレインストーミングであれこれをアイディアを出す段階などでは とても有効なものです。しかし focused thinking をしたいときには 妨げとなるものです。
2009/8/14(金)クリエイティブな思考を妨げるもの(2)
2つ目は Gator Brain。これは本能的な反応のことです。
If a new creature comes into its territory, a gator has only a limited set of possible behaviors. It can fight , it can flee….It can freeze. (P21)
ワニは 初めて出会った生き物に対し、 逃げるか、闘うか、固まって動けなくなるか、 という反応をします。反応というのは 何か考えて行動するのではなく、 反射的に行うものですよね。生命を守るためには必要なことですが、 考えないですることですから、 あまり人間らしくない行動に なってしまうことも少なくありません。冷静な判断ができないときは このパターンになっているときが 多いのだと思います。これは僕の経験にも 思い当たることがあったので、 後ほど詳しくお話ししますね。
また、Gator Brainの状態では、 未知のものは 「自分を脅かすもの」とみなします。そのため、 新しいアイディア=危険なもの となり、受け入れられないということも 起こりやすくなってしまいます。
2009/8/18(火)クリエイティブな思考を妨げるもの(3)
3つ目は Elephant’s Tether。これは小象のときに鎖につながれた象が 大きくなって鎖を簡単に引きちぎるくらいの力を持っても 逃げ出さずにつながれたままでいる、 という話からきている言葉です。前にやってみてだめだったから できない、とあきらめてしまうとか、 僕たちにもこうしたことは よくあることですよね。「固定概念」とか「思い込み」、「先入観」 と言ってもいいかもしれません。
2009/8/24(月)Gator Brainによる危機(1)
8/14にあげたGator Brainのところに 関連した僕の体験です。2008年は、 僕にとって忘れられない年でした。なぜなら、 常識では考えられない値上げがあったからです。2008年7月、 僕は仕入先のあるシカゴまで、 はるばる8時間掛けて車で行きました。その席で、交渉相手のJames (仮名)は 「Jun, 残念ながら、 この1Kg= $1.7の価格は うちの仕入値からすると限界の価格なんだ。」 と切り出してきました。
それを聞いた僕は こんなことを考えていました。(普通多くの会社は、売上高に対する利益率が数%。 何を、常識はずれなことを言い出しているのか? 年初めは、1Kg= $1.0だったんだから、半年で170%の値上げじゃないか。)こんなふうに考えていると 言いようのない怒りがこみ上げてきました。
そして、怒りを隠しながら 「もし、うちが『ノー』と言ったらどうするんだ?」 と僕は聞きました。するとJamesは 「御社とは取引を止める事になると思う。」 と言ったのです。その言葉を聞いたとき、 僕の感情は、怒りから絶望に変わりました。そして正直、交渉の席から逃げ出したくもなったのです。
2009/8/26(水)Gator Brainによる危機(2)
でも、交渉の場から 逃げ出すわけにはいきませんでした。それは、このままでは、 一生懸命がんばっている仲間に 迷惑をかけることになると思ったからです。そのことに気が付いたとき 「なんでこんなひどい目に合わなきゃいけないんだ。」 「もうだめだ。絶望的だ。」 といった思いが 「じゃあ、この事態をどうするか。」 「最善の方法はなんだろうか。」 という考えに変わり、 怒りや絶望の気持ちがだんだんおさまってきました。
そして、 「今の値上げは仕方がない。 ならば、市場が元の価格に戻ったときに、 どう仕入値を市場価格に反映させるかを考えよう。」 という思考になっていったのです。結局、この交渉の場では 市場価格の指標を両者間で明確にして、 それに取引価格が毎月連動するように、 という提案をしました。そして今現在、市場価格は落ち着きを取り戻し、 材料の仕入値も順調に、 市場に比例して下がりました。
今思えば、あの交渉の席で、 相手もコントロールできない価格なのに 怒ったり、或いは投げやりになって逃げたりしないで 本当に良かったと思っています。結果としてこのときは GatorBrainの思考パターンから 抜け出ることができました。でも、 振り返ってみると こうした思考パターンに陥った、 または陥りそうになった経験はたくさんあります。
3つの思考パターンを知った今、 困った状況、行き詰まりを感じたとき、 「自分がどの思考パターンにあるか」 を考えてみるといいのかもしれませんね。
2009/9/1(火)よいブレインストーミングの4つのルール
会議などでよく使われる手法として ブレインストーミングがあります。会社などの組織やグループで 新しいアイデアを作りたいというときに使うのに とても適した手法の1つです。このブレインストーミングを考案したオズボーン氏によると、 効果的なブレインストーミングには 次の4つの「ルール」があるそうです。
1, Criticism is ruled out.
2, Freewheeling is welcomed.
3, Quantity is wanted.
4, Combination and improvement are sought. (P.71)
出されたアイデアを批判せず、 言いたい放題言うことを歓迎し、 とにかく数をたくさん出して、 それらを組み合わせたり発展させたりする、 とあります。この条件を満たした会議を想像すると、 自由で活発、そして実りある雰囲気がある感じがします。最近、あなたが参加した会議は どうだったでしょうか? この4つのルールのうち、 いくつ満たされていましたか?
番外編 “Productive Thinking”実践レポートへ
2009/9/30(水)進んでいる道は、正しい道ですか?
このブログの初回に、 いも虫の話をさせて頂きました。いも虫は、何も目的を持たずに、 前のいも虫について歩いていく。よくよく考えてみると、僕たちも、 いも虫とあまり変わらないところがあるのかもしれません。会社が、言うから。友達が、言うから。先生が、言うから。 本当に、それが正しい道なのでしょうか?
大切な事は、自分でそれが正しいのかを 一度考えてみることだと思います。その考え方を僕たちは、Think Betterで学びました。確かに、問題点、 著者の言うItch(かゆみ)を書き出してみることは めんどくさいし、時間も掛かる作業かもしれません。でも、少しでも今みなさんに、悩みや不安があるなら 一度立ち止まって、 かゆみを書き出してみることをお奨めします。
すべての問題や、出来る限りのアイデアを出し切ってみましょう。そこから、何か新しいアイデアが生まれるかもしれません。今自分が進んでいる道が、正しい道なのか 一度、考えてみてください。そして、もし仮に正しい道ではないのなら 勇気を出して、新しい道を進んでみては如何でしょうか?
僕自身もつねにそのことを意識して これからまた学び、実行していきたいと思います。最後まで、ブログにお付き合い頂きまして、 ありがとうございました。
猪俣潤