こんにちは。ソフィー長岡校講師の野村ひと美です。ソフィーの洋書テキストの1つに”How To Talk So Kids Can Learn”というものがあります。これは親や教師が子供に勉強して欲しい時や、自律的に行動して欲しい時に「どのように声がけをしたらいいのか」をわかりやすくまとめた名著。この洋書を読んで、自分なりに実践してみた結果を今回はひとつ紹介したいと思います。
【問題】子ども部屋の汚さにうんざりして、つい怒ってしまう。
特に仕事や家事でヘトヘトな時、子どもに汚されまくった部屋を見た時の怒りといったらありません。いつこぼしたかわからない床の染み、食べっぱなしのお菓子、触りたくもない脱ぎっぱなしの靴下、あぁ…一体誰がこれを片付けると思ってるの!と言いたくなるような絶望的な光景。発狂して叫びそうになること必至です!(というか実際、怒っちゃいますよね)
この「散らかす→怒る→片付けさせる→散らかす」の延々ループいったいどうにかならないんでしょうか。こっちだって何度も同じことを言いたくない、せめて一緒にいる時くらい、優しいお母さんでいたいのに。
【解決策】“How To Talk So Kids Can Learn”を読むべし
そんな風に感じたことがある人にぜひ読んでみて欲しいのがこの “How To Talk So Kids Can Learn“なのです。この本はマンガつきで読みやすく、洋書初心者にはとってもオススメ。この中では子どもが自発的に学ぶにはどういった言葉がけが有効かを、マンガ付きでユーモアたっぷりに解説してくれています。
著者のAdele FaberとElaine Mazlishはアメリカで教育関係者などから絶大な信頼を得ている親子コミュニケーションのエキスパートです。彼女たちの本は1980年代に大ベストセラー”How to Talk So Kids Will Listen & Listen So Kids Will Talk”が出版されて以来、アメリカで累計300万部以上も売り上げを記録しています。この本で紹介されているスキルは親子関係や教師と生徒のコミュニケーション改善にはもちろんのこと、会社での上司や部下とのコミュニケーション改善など大人同士のコミュニケーションにまで広く使える一冊となっています。
「しゃべるウサギ」メソッド
本の中でもポーンと目に飛び込んできたページがこちら。
“(ほぼ直訳)生徒は時として大人の話すことをシャットアウトしてしまうことがある。だがしかしだ、もし彼らが書いてあるものを見たら、そのメッセージを受け取りやすくなることがある。この貼り紙は汚れたウサギ小屋に貼られたものである”
この絵では「ウサギ小屋を掃除しなさい」というメッセージをあえて、小屋の中にいるいたいけなウサギちゃんに語らせています。心配そうにウサギ小屋を見つめる生徒。小屋にはこう書かれた手紙が貼ってあります。「助けて!これ以上息をとめてなんかいられないわ。誰かお願い、私の小屋を掃除してちょうだい。ウサギのピートより」
これは子どもに言うことを聞いてもらう方法の1つ「言ってだめなら書いてみるの法則」です。
たたみからの手紙:「しゃべるウサギ」メソッドの応用
さっそく家に帰り、私もこれを応用してみることにしました。相変わらず部屋が散らかり放題の我が子。今日はあえて怒らず、たたみになったつもりで子どもに宛てた手紙を書きました。(この作業が案外クリエイティブで楽しかったです。まぁ普段、たたみになりきって手紙を書くなんてないですからね)
そして実際書いてみた手紙がこちら。
やっぱりたたみですから手書きかなと思って縦書き便箋に(笑) 内容は、いつもきれいな顔でいたいたたみさんからのメッセージです。いつも子どもに服やごみをそのままにされ、汚されちゃうのでとても悲しいです。困っています。シクシク…というものです。
当時8歳だった子ども。「ママ、なんか貼ってあるんだけど。えっ、たたみから手紙がきてるよ。」と驚いた様子。私も「なになに?」と一緒に手紙を覗き込みます。すると子どもから意外な反応が。「あぁたたみさん、ごめんなさい。ごめん」と言いながら、なんと泣いているではありませんか!そして「片付ける、片付けるよ」と散らばった服を整理しはじめました。
途中整理しながら「あれ?でもたたみが文字なんて書けるかなぁ。おかしくない?」と何度も訝しげに手紙を見つめるも、「でも私信じてみる。何でも信じてみないと始まらないもの」と言いながら、自らすすんで部屋を片付けていきました。
私はそんな子どもを手伝いながら、子どもの創造力の豊かさと感受性に感心するとともになんだかその片付ける姿を頼もしく眺めたのでした。そして「確かにこの子は片づけが苦手だけれど人として大事な自分以外の誰かに寄り添う気持ち、相手の立場になって考える、ということがちゃんとできているなぁ」と良い部分を見つけることができたのです。
たたみ事件から半年たって
もう畳からの手紙を信じる時期は過ぎてしまいましたが畳の気持ちになって泣いていたあの頃を懐かしく思い出しながら、今でも時折子育てのヒントがほしい時に“How To Talk So Kids Can Learn”を読み返すことがあります。
この本にはこの他にも様々な愛情あふれるコミュニケーションのコツが紹介されていて、すべてのお父さん・お母さん、そして学校の先生などにぜひ読んでみて欲しい内容です。Amazon.comでの読者評価を見ても、その内容の素晴らしさを想像することができるでしょう。この記事を書いている現時点(2015年4月)ではまだ日本語には翻訳されていません。近年ビジネス系の洋書の優れたものはほとんどが邦訳されるようになってきましたが、コミュニケーション系のものは日本ではあまり売れないからなのか、未邦訳のものが多いです。興味があればぜひ読んでみてください。
洋書を読むのは自分一人では難しい、というひとはソフィーの通信コースや通学コースで読むこともできます。心からオススメできる良著です。