洋書を読んで英語力をアップさせていくという学習方法を私たちが特におススメするのは、洋書にからんだ他のメディアを絡めることで、以前よりもかなり学習効果を上げやすくなってきている、という理由もあります。ここでは洋書と著者のスピーチ動画を組み合わせていく学習法と、この学習法をするためのオススメの洋書および動画を紹介していきます。
トップダウンのためにまず著者の動画を観るべし!
ソフィーでは洋書を読む前にその著者の動画をチェックすることを強くお勧めしています。日本ではまだ少ないのですが、アメリカの本の著者たちの多くは、その本に関する内容のスピーチ動画をアップしています。もしくはローカルテレビ局のインタビュー動画がアップされていたりすることもあります。
あくまで実感値ですが、アメリカで出版されるビジネス系の本の著者のうち、約9割が自分の動画をアップしています。(もしくは誰かがその人の動画をアップしています。) これらを洋書を読み始める前に観ておくことで、本の全体像がつかみやすくなります。本の全体像をつかんでから英文を読み始めることにより「トップダウン」の理解が起こり、内容が自然に頭に入っていきやすくなるのです。
また五感のうち複数の感覚を使って理解を進めたほうが良い、 ということは脳科学の最近の研究ではよく知られるようになってきています。(“Brain Rules” Rule#9 参照)ですから動画を観る時に「聴覚」と「視覚」を使い、さらに洋書を読む時に「視覚」を刺激することで相乗効果も得られます。
動画選びの3つのポイント
ただちょっと難しいのが「動画選び」です。たとえば自分が読もうとしている本の著者の動画がたくさん存在している場合、それらを全部見ていたら時間がかかりすぎてそもそもトップダウンになりません。そこでまずは動画選びのポイントをいくつかまとめてみましょう。
【ポイント1】10〜20分程度までの長さの動画を選ぶ
講演会全部をアップした2時間にもなる動画もよくありますが、それだとトップダウンに向きません。できれば10分程度の長さか、せいぜい20分くらいまでのものが適当だと思います。
【ポイント2】日本語の字幕が付いているものを選ぶ
数はかなり少なくなりますが、日本語の字幕が付いているものなら仮に英語が最初は聞き取れなくても内容の全体像をつかむことはできます。
【ポイント3】画質や音質が良いものを選ぶ
当たり前ですが、画質や音質が良い物のほうが観やすいですから内容の全体像をつかむのには向いています。
TEDスピーチはオススメ
これらのポイントを考えると、優れたスピーチ動画が集められ ている“TED”サイトの中に著者スピーチがあればベストです。TEDのものはたいてい上記の3つのポイントをクリアしています。
ちなみに日本語字幕を出すには動画再生中、右の画像で示してある“Subtitiles”部分をクリックすれば、出てきます。(もちろん日本語字幕が用意されているもののみです)
また動画に沿って表示される字幕だけでなく、字幕の原稿も読むことが出来ます。英語はもちろん、(日本語訳があれば)日本語も見れますので、トップダウンに役立つでしょう。原稿を読むには、動画再生中に、右の画像で示した“Transcript”部分をクリックすれば出てきます。
洋書選びにも動画が役立つ
これらの著者動画を観てみるのは、実際にその本を読み始める前だけでなく、「洋書選び」をする時にも役立ちます。興味のある本の著者名を検索し、動画を観てみるとたとえその内容 がぜんぜん理解できなかったとしても、あなたとその人の相性みたいなものを感じることができるはずです。その人の話す様子を観て「この人の話をもっと聞きたい」と思ったなら、その本はあなたに合っている可能性が高いです。
TEDの名スピーチ4選&洋書テキスト
ではソフィーの洋書テキストのうち著者たちのオススメTEDスピーチを4つ紹介してみしょう。 どれも前に示した動画選びの3つの基準をクリアしています。
【オススメ1】マイケル・サンデル TED2010 · Filmed February 2010 Michael Sandel: The lost art of democratic debate (19分42秒)
NHKの「ハーバード白熱教室」で日本でも有名になったサンデル氏のスピーチ は非常にわかりやすくとっつきやすいです。哲学的な難しい問題をこれだけ一 般の人でも興味が持てる形で話すそのワザは見事です。ソフィーの洋書テキス ト“Justice”は分量もあり、少し腰が引けてしまうかもしれません。でも結局サンデル氏の言いたいことはこの20分弱のスピーチに集約されています。それさえつかめれば“Justice”もそれほど難しくないと感じるのではないでしょうか。
【オススメ2】ダン・アリエリ EG 2008 · Filmed December 2008 Dan Ariely: Are we in control of our own decisions? (17分26秒)
「行動経済学」の第一人者ダン・アリエリ氏のスピーチではそもそもこの “Predictably Irrational”という本を書き始めることになったきっかけから話し てくれています。そしてこの本の中で紹介されている実験をいくつか説明しています。その話し方にはユーモアがあり、難し目の話も興味を持って聞けるでしょう。また本の中の英文も同様なユーモアが含まれているので、このスピーチを聞いた後なら、本を読みながら実際に著者の話を目の前で聞いているような気持ちになってきたりするかもしれません。
【オススメ3】キャロル・ドゥエック TEDxNorrkoping · Filmed November 2014 Carol Dweck: The power of believing that you can improve (10分20秒)
自分が「できないこと」をどう捉えるかによって、長期的な成長に大きな影響が出る、という研究をまとめた本がキャロル・ドゥエック氏の“Mindset”とい う本。この本の中の基本的な考え方をシカゴの高校生たちなどの事例を挙げな がら説明しています。ゆっくりと一語一語確かめるように話す彼女の語り口は非常に柔らかで、研究者としての真摯さや優しさが感じられます。本で紹介されている研究のひとつひとつは学術的ですが、その背後にある著者のあたたかさをこの動画で感じてから読むと、ずっと読みやすいはずです。
【オススメ4】ウイリアム・ユーリー EDxMidwest · Filmed October 2010 William Ury: The walk from “no” to “yes” (18分25秒)
テロや戦争などのニュースで暗い気持ちになりがちな状況の中で「交渉学」の 第一人者ウイリアム・ユーリー氏のスピーチは、私たちに大きな希望を与えてくれます。その内容は明快。しかも具体的に自分自身が紛争解決のために行動した体験などを織り交ぜながら話してくれるのでメッセージは極めて強力です。さらに、それらの国同士の紛争にしても、もっと身近な会社内や友達同士や家 族の中での争いにしても、私たちはその解決のために誰でも今すぐ一歩を踏み出すことができる、ということを示してくれます。このスピーチを観たら彼の著書のひとつ“Getting to Yes”を読まずにいられなくなるかも。
まとめ
以上、4つだけですが紹介しました。まさに「名スピーチ」といえるものばかりです。洋書自体を読むことが仮になかったとしても、ぜひ動画だけでも観てみてください。 また他の洋書に関しても、たくさん著者動画が現時点でもありますから、今回紹介した3つのポイントなどを参考にぜひ自分で検索して見つけてみてください。それらをたとえば電車の移動時間や会社のお昼休みなど、細切れ時間を使ってみてみましょう。それによって、洋書がぐっと読みやすくなるはずです。そして英語力も圧倒的に向上しやすくなっていくでしょう。