去る8月25日に今年(2014年)の「全国学力テスト」の結果が文部科学省から公表されました。これは2007年より全国の小6生および中3生全員を対象として毎年行われているものです。
文部科学省の「 平成26年度全国学力・学習状況調査の結果について」のページ
調査結果を踏まえて、文部科学省は「学力の底上げが進んでいる」との見解を示したようです。
ただ、このような調査はおそらくかなりの費用と手間がかかると思いますが、その割には正確に「学力」をはかることはできていない、と思うのです。
その理由の大きなものを3つ上げてみます。
1.全国学力テストは「学力」を調べられていない、と思う3つの理由
【理由1】先生や生徒のテストへのやる気で点数は変わる
テストの点数はそれに取り組む先生や生徒のやる気次第でかわります。あくまで想像ですが、多くの学校は2007年に実施された当初は、あまり先生も生徒もテストに前向きではなかったのではないでしょうか。ところが毎年都道府県別の順位を発表されるので、それに目の色を変えて対策する県が出てくれば、その県だけ点数が上がるはずです。どんな問題にも「傾向」があります。過去の問題から傾向を研究して対策授業をしたりすれば、それを全くしていない県よりも点数は高くなります。
【理由2】まったく同じ難易度の問題をつくるのは不可能である
いくら業者が頑張ってもまったく同じ難易度を作るのは不可能です。大学入試センター試験も毎年平均点が大幅に違います。作る方としては毎年同じくらいの平均点になるように、と作っていると思うのですが、ふたを開けてみると思うような結果にはならなかったりするのです。
ですから前年度より平均点数が上がったからといって「国民の学力が上がった」とは必ずしも言えないと思うのです。
【理由3】「テストの点数」=「学力」ではない
もっと根本的なことを言えば、「テストの点数」=「学力」ではない、というポイントは重要だと思います。テストの点数は確かに「どれだけ記憶しているか」や「どれだけ理解をしているか」を表しているかもしれません。でも「学力」すなわち「学ぶ力」を表しているわけではありません。
無理やり誰かに強制されて勉強すると、「テストの点数」は上がっても、その反動として「燃え尽き症候群」のようなものになってしまい「学ぶ意欲」や「学ぶ力」はガクンと低下してしまう、ということはよくあります。
2.問題解決のための提案
もし多大なコストと労力をかけて必要な情報がつかめていない、のなら、思い切ってこのテストをやめるのが一番良いと思います。
一度はじめたものをやめるのは、多くの人がかかわっている事業では大変なものです。
でも、経営でもそうですが、「何か新しいことをやる」よりも「必要ないことをやめる」ことの方が、優先してやったほうが物事はうまく行きます。
「必要ないことをやめる」ことで新しく余裕ができるので、その力を「何か新しいことをやる」ことに使いやすくなるからです。
それでも、このテストをすぐにやめるわけにはいかない、というのなら、とりあえず「学力テスト」という名前ではなく「理解度テスト」などと名前を変えるのはどうでしょう?
「全国学力テスト」という名前が「テストの点数」=「学力」という誤解と混乱を助長しまっている可能性があります。
「理解度テスト」なら「テストの点数」=「理解度」を表しているものである、というニュアンスになり、「テストの点数」=「学力」である、という誤解は少しだけ和らぐのでは、と思うのです。