中学卒業程度の英語力があれば、洋書を読むことはできるようになります。しかし、多くの人はそのやり方がわからないので、なかなかできるようになりません。ここでは、その洋書初心者のために、その方法を具体的なステップとしてまとめたものを紹介します。
【内容の要約】
- 洋書初心者がよく陥る失敗パターン
- 洋書初心者の読み方のコツとは?
- 洋書初心者のための洋書の読み方「ザ・9ステップ」
1.洋書初心者がよく陥る失敗パターン
洋書の読みはじめの初心者が最も良く陥る失敗のパターンは、ごく簡単に言うと「英文解釈をしてしまう」というものです。学校の授業で一語一句訳していき、その一文一文を吟味していくという英語の学習方法に慣れ親しみすぎているので、洋書を読むときもつい同じやり方でやろうとしてしまいます。しかしこのやり方では絶対にうまく行きません。
このやり方では時間が無駄にかかるだけで、1冊読み終えるためには途方もない時間がかかってしまいます。そして万が一苦労の末読み終えたとしても、最初の方で何が書かれていたのかは、おそらくすでに忘れかかってしまっていて、本全体で何が書かれていたのかは、つかみきれずに終わってしまいます。全くの無駄骨です。
この無駄骨を一回でも味わうと大抵の人は「自分には無理だ」と思い込んでしまい、もう洋書に挑戦なんてしようとも思わなくなってしまいます。
2.洋書初心者の読み方のコツとは?
中学卒業程度の英語力があり、本の内容に対する興味と、その内容に対する一定の背景知識があれば、誰でも洋書は読めるようになります。
コツはシンプル。
「日本語の本と同じように英語の本を読む」
究極的にはこれだけです。
日本語の本を読む時のパターン
まずは日本語の本を読む時に、どうするかを考えてみましょう。
(とりあえずここでは説明のために小説などではなくビジネス書や実用書の洋書を読むこととします)
まず表紙を見るでしょう。そして裏表紙でしょうか?本の値段や、本に関するコメントなどの追加情報を見る人が多いのではないでしょうか?
その後は本を開いて著者プロフィールを見るかもしれません。そして目次。その後興味のある部分だけを開いてみたり、小見出しだけをみてみたり、パラパラとめくって図表やイラストだけをみてみたりして、本全体の「感じ」や「著者の言いたいこと」をざっくりとつかもうとするでしょう。
その上で、細かいところへと読み進んでいくはずです。つまり「全体像→細かいところ」へ理解を進めようとします。これは「上から下へ」(トップダウン)の学び方です。
ところが英語の本だと
ところがこれが洋書だと、多くの人はまったく違ったプロセスで読みはじめます。全体像をつかもうとすることなく、いきなりChapter1の1行目から読み始めようとするのです。わからない単語を調べ、一文を理解し、その後また次の一文を理解しようとする。
つまり「細かいところ→全体像」へ理解を進めようとするのです。これは「下から上へ」(ボトムアップ)の学び方です。
「下から上へ」vs「上から下へ」
「下から上へ」(ボトムアップ)の学び方は、少ない情報量をじっくり処理するのには向いていますが、多くの情報量を一気に処理するのには向いていません。ですからこの方法で英文を読もうとしても、なかなか前に進まず、途中に嫌になってしまい投げ出す結果となってしまうのです。
これに対し「上から下へ」(トップダウン)の学び方は、多くの情報量を一気に処理するのに向いています。少ない情報量をじっくり吟味するのには向いていません。でも、まず大量の情報の中から必要な物だけを見つけ出すような場合には、非常に適しています。
私たちは学校教育の中で「下から上へ」(ボトムアップ)の情報処理方法に慣れ親しんでしまっています。これは「慣れ親しんでいる」という言葉では生ぬるいかもしれません。「刷り込まれている」と言った方が適切でしょうか。そのため日本語を見ると自然に「上から下へ」(トップダウン)の向きで理解しようとするのに、英語を見た瞬間に条件反射的に「下から上へ」(ボトムアップ)の向きに理解しようとしてしまいます。
どちらの方が優れているとか劣っているとかそういうことではありません。それぞれのやり方にそれぞれの良さがあり、それぞれの方法を状況に応じて使い分けることが大切なのです。それなのに従来の教育では片方の方法に偏ってしまっていることが問題なのです。
ですから最初のうちは、条件付けされてしまっている「下から上へ」(ボトムアップ)のアプローチから抜け出し、「上から下へ」(トップダウン)のアプローチで学んでいくように意図的に矯正していく必要があります。
3.洋書初心者のための洋書の読み方「ザ・9ステップ」
ではどのように矯正していったらいいのでしょうか?そのプロセスの取っ掛かりの部分をわかりやすくステップにまとめてみました。(注意:主にビジネス系の洋書の読み方です。小説・物語を読むときにはあまり向かないかもしれません)
【STEP1】 表紙・裏表紙などから本の全体像の情報を得る
表紙のタイトル、サブタイトル、裏表紙の推薦者の言葉、などからいろいろ本の全体像に関する情報が得られます。
【STEP2】 著者のプロフィールを見て、そこから内容を想像してみる
著者のプロフィールを読んで「著者が何をしてきた人なのか?」ということがわかり本の全体像を想像できます。著者がすでに他の本も出版していればこれまでの著書情報も書かれていたりします。これも本の全体像のヒントになり得ます。
【STEP3】 目次から全体の構成を頭に入れる
英語の本は日本語の本に比べ本の構成がかなりはっきりしています。たとえばパート1は問題点、パート2は改善策、パート3は実践事例、などのように明確になっていることが多いので、それを頭に入れておくと読みやすくなります。
【STEP4】 目次の構成をマインドマップに書き出してみる
マインドマップは「上から下へ」の理解を進めるのに最適なノートの取り方です。手を動かすことで読んでいるだけのときとは違った理解が起こってきます。
【STEP5】 本の読者レビューをAmazon.comでチェックし、本の内容を推測する
アマゾンの読者レビューは「上から下へ」の理解を行うのに非常に役立ちます。よいレビューアーは本の構成などをわかりやすく書いてくれていることが多いです。
【STEP6】 著者のページがあればそれをチェックし、本の内容を推測する
ビジネス系の洋書の著者の9割はホームページを持っています。そこに追加情報などがあればそれを確認して全体像の理解に役立てます。
【STEP7】 著者の講演ビデオなどがないかをYoutubeなどでチェックし、あればそれを見て内容を推測する
アメリカで出版される著者のほとんどは本を出版し、それをその後の講演ビジネスにつなげて収入を稼いでいます。そのためたいていの著者は講演ビデオがネット上にアップされているので、それを見て、全体像を確認します。講演のビデオは聞いても内容はよくわからないかもしれません。でもそれで大丈夫。著者のなんとなくの雰囲気をつかむだけで、本がずっと読みやすくなります。
【STEP8】 本をパラパラとめくり、太字やイラスト図表のところを中心に見る
太字や図表のところを頭に入れ、興味があるところは少し止まって読んでもかまいません。(ただし英文解釈をはじめないように要注意)
【STEP9】 パラパラとめくっている最中に興味を引かれた場所には赤ペンなどで印をしておく
気になったところにペンでメモを残しておくと、あとから読み返したときにとっても役立ちます。
以上が、洋書初心者向けの読み方「ザ・9ステップ」です。
「洋書の読み方」と言っておきながら、実はまだ「読む」段階に入っていません。実はこれは、「読む」前の準備段階です。しかし、この準備を行うことで、内容がよりスムースに「上から下へ」読んでいけるようになります。
「洋書を読むのに前もって準備をそんなにしなくてはいけないのか」と思うかもしれません。でも、日本語の本を読むときには、多くの人はこのステップのうちの大半を無意識に自然に行ってしまっています。自然にやっているから面倒に感じないだけです。このプロセスを読む前に行ってみると、いきなり読み始める時に比べ、圧倒的にスムースに頭に英語が入ってくる感じがすると思います。そして何度かこのプロセスをやっているうちに、英語の本でも自然になっていき、面倒だと感じなくなっていきます。
ぜひ試してみてください。