アメリカ大統領選を読み解くために読んでおきたい洋書の名著5選

長く続いたアメリカ大統領選挙戦ももうすぐ本選挙を迎えます。良くも悪くも注目度が高かった今回の選挙戦ですが、正直言ってよく理解できなかったところも少なくなかったのではないでしょうか?今回はこの選挙戦を読み解いていくためにピッタリな洋書を選りすぐって紹介したいと思います。

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今回のアメリカ大統領選挙にはわからないことがいっぱい

いよいよアメリカ大統領選挙が11月8日(火)に行われます。今年2月の予備選に始まって以来、長々と続いてきた戦いにようやくケリがつきます。あなたはここまでの選挙戦報道を見て、どのように感じ、何を考えたでしょうか?

ドナルド・トランプ氏の出馬によって良くも悪くも注目度は高かった選挙戦でしたし、テレビや新聞で報道される内容を興味深く見てきた人もきっと多かったでしょう。しかし、正直言っていまだによく理解できない点も多いのではないでしょうか?なぜこの選挙戦で共和党の代表にトランプ氏が選ばれたのか?そもそもトランプ氏は何を主張していて、どうしてこれだけ支持されたのか?これだけのメディアからのバッシングにも関わらず、なかなか支持率が落ちなかったのはなぜなのか?トランプ氏とクリントン氏の主張にはどのような違いと特徴があって、それぞれが大統領になった場合、一体何をしようとしているのか?そしてその結果、アメリカや世界では今後数年間のうちにどんな変化が起こる可能性があるのか?

次から次へと疑問は出てきます。

アメリカ大統領選挙を読み解くために読むべき洋書はこれだ!

これらの疑問に自分なりの答えを出し、溢れるメディアからの情報に振り回されず冷静に判断していけるようになるためには、その判断の指針となるようないつの時代も変わらぬ原理原則について語られている本を読み、理解を深めておくことが大切です。

そこで今回は特に政治や経済の分野において、判断力を高めるための指標となるような原理原則をまとめ上げた洋書の名著を紹介していきましょう。

1. “Justice”

justiceNHKの白熱教室で数年前に有名になったマイケル・サンデル氏のこの著書には、アメリカの政治思想の変遷が非常にわかりやすくまとめられています。アメリカにおける共和党と民主党のそれぞれの立ち位置がこれを読み込んでいくとわかってくるでしょう。また、これからの政治がどうあるべきなのか?という点もサンデル氏の意見を聞きながら、自分なりの考えも少しずつまとめられるようになっていくでしょう。そしてさらには自分自身の仕事や私生活上での判断力アップにも十分に役立てることができるでしょう。

2. “Naked Economics”

cover_Naked Economicsこの本はもともと経済ジャーナリストだった著者が一般の人でもわかりやすいように数式やグラフを一切使わずに経済の基本をまとめ上げた名著。興味深いストーリーがたくさんあり、単純に読み物としても楽しむことができます。そしてこの本を一通り読むことで、アメリカの大統領候補はもちろん、日本の政治家たちや経済評論家たちの主張や立ち位置がかなり理解できるようになってくるでしょう。また、この本を読み、理解することで、自分の仕事に関する判断もより正確によりすばやくすることができるようになってくると思います。

3. “Naked Statistics”

naked-statistics“Naked Economics” の著者が、私たちのまわりにあふれている「統計」について極めてわかりやすくまとめ上げたベストセラー。“Naked Economics” 同様、こちらも一切の数式やグラフを使うことなく興味深いストーリーを交えながら説明してくれています。現代の政治家たちは市民の支持を得るために様々な統計を持ち出してきます。そして、場合によっては対立する候補者が同じテーマなのに正反対の意味を持つデータを持ち出してきたりすることもあります。このような場合、どの数字を信じるべきでどれを信じないべきか、ポイントが分かるようになります。また自分で統計を使って人を説得する時にも、そのコツやポイントが分かるようにもなってくるでしょう。

4. “Economics in One Lesson”

Economics in One Lesson by Henry HazlittアメリカのジャーナリストHenry Hazlittが1946年に出版した経済の本質を見事に描いた傑作です。この本の”lesson” は最初のわずか5ページで終わっており、著者が言いたいことはすべてこの中に収められています。残りの200ページほどにはその経済原則が現実化している実例を挙げているだけなので、興味がなければその部分は読まなくても、著者の主張は十分に掴めてしまいます。最初の5ページをまずはじっくりと読んでみてください。そしてそれを読むだけで、ドナルド・トランプの主張の多くがなぜ間違ったものであるのか、比較的簡単に理解できるようになるでしょう。

5. “The Elements of Journalism”

elements-of-journalism著者たちがアメリカのジャーナリストたち300人に3年に渡りヒアリングしていきながら、「ジャーナリズムの原則」を浮き彫りにさせ、体系化させた名著。アメリカ大統領選挙を巡る報道では、さまざまな情報が入り乱れ、結局何がどう正しいのかわかりにくくなってしまった面があったと思います。しかしこの本を読むことで、「本来報道とはどうあるべきか」ということに関する考察を深めることができ、より良い情報の取捨選択がしやすくなっていくと思います。もともとジャーナリストたちに向けて書かれたものですが、一般の私たちが読んでも十分に役立ちます。ただ読むのに必要な英語力はかなり高めな方。事例も英語圏の事例なので、すぐにはピンと来にくいこともあるかもしれません。でも、Wikipediaとかを参照しながら、ゆっくり読み進めていけば、洋書上級者なら行けるでしょう。

まとめ

アメリカ大統領戦をきっかけにぜひ一冊だけでも手にとって見てください。日本語訳が出ているものも中にはありますが、原書で読むのが絶対にお勧め。このような原理原則系の本は、どうしても日本語訳しきれないので邦訳版はかえって読みにくくなってしまいます。今回の大統領選を読み解くのには間に合わなかったとしても、今後日本の政治家の発言などを深読みする時にもきっと役立つはず。すぐには読めなくても、英語力を高めていきながら、今年か来年のmust-readのリストにぜひ入れておいてください!

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