行動経済学から学ぶ「洋書を使って自分の成長を促進させる方法」→プライミング効果の利用

今回はダン・アリエリー教授の行動経済学に関する名著“Predictably Irrational”から、英語学習の成果を促進させるための方法を考察していきます。洋書を上手に使って、英語に関する能力はもちろん、その他の能力の成長も加速させることができる効果の高いお勧めの方法です。
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ニューヨーク大学生への実験

Predictably Irrational”のChapter10にニューヨーク大学の学生を被験者にした非常に興味深い実験が紹介されています。その実験は簡単にまとめると次のようなものです。

「文章の並べ替え問題」を用意し、ニューヨーク大学の学生にをやってもらう。その文章中には「ビンゴ」とか「古い」とか「フロリダ」など、「年老いたこと」を連想させる単語を散りばめておく。(フロリダは老後の移住地として有名)そしてそのテストが終わった後、教室を出て廊下のある地点からある地点までを歩き終える時間を計測する。するとそうでない人たちに比べ、「年老いたこと」を連想させる問題をやった学生たちは明らかに歩く速度が遅くなる、ということがわかった。

(“Predictably Irrational”, p.214〜215を意訳して要約)

この実験で見られる効果は「プライミング効果」と呼ばれています。直前に頭にインプットされた言葉に、私たちは知らず知らずのうちに影響を受けるのです。この大学生たちの実験からもわかるように、その影響はかなり直接的で、私たちの多くが想像するよりも大きなものです。

この実験からわかること:「マイナスのプライミング効果」に気をつけるべし

この実験からわかることは、私たちは自分の頭に入ってくる言葉やイメージなどにかなり注意する必要がある、ということです。毎朝ニュース番組を見て紛争や殺人に関する言葉を頭にインプットしてから出勤することは、あなたの一日に何らかの影響を与えます。また、出勤途中の電車内でスマホでYahooニュースを読み、政治家の不正や芸能人の不倫のニュースをインプットしてから職場に向かうことは、あなたの一日の仕事にやっぱり影響を与えます。commute

もしかすると文章並べ替え問題の「マイナスのプライミング効果」がニューヨークの大学生の歩く速度を下げたように、ニュースがあなたの仕事の速度や質を下げていることもあるかもしれません。また、あなたの頭の中の「内的会話」にもプライミング効果があるはずです。ですからもしあなたがあるお客さんのところへ向かう時に、たとえば嫌な上司の事を考えていたとしたら、いざお客さんのところに付いた時に、気の利いた良い提案が口から出にくくなっていたりすることもあるかもしれません。

解決策:「プラスのプライミング効果」を意図的に使うべし

では私たちはどうしたら良いのでしょうか?テレビのニュースなどは一切見ないようにした方がいいのでしょうか?頭の中で起こる会話もすべてネガティブなものはストップさせてポジティブなものに強制的にした方がいいのでしょうか?

ただ実際の生活では、ニュースを全く見ないようにすることは多くの人にとって難しいことでしょう。ある程度のニュースを頭に入れておかないとお客さんとの話しについていけなかったりするでしょうし、社会の変化にも対応できなかったりすることもあるかもしれません。またネガティブな内的会話を一気にすべてやめてしまうこともかなり難しく、現実的ではないでしょう。

そこでお勧めしたいのが「プラスのプライミング効果」を利用する、という方法です。ニューヨーク大学の学生に対して行った実験では彼らにマイナスのプライミング効果を与えたのですが、幸いにしてこのプライミング効果はプラスに働かせることも可能です。つまりポジティブな言葉をインプットすれば、やる気が上がったり、前向きになったり、自然と良いアイデアが浮かびやすくなったり、集中力が出やすくなったり、ということが起こるのです。 ニュースを見るのは、それ自体は悪くありません。でも、ニュースを見た後、ポジティブな言葉をインプットしてリセットし「プラスのプライミング効果」を自分に効かせてから仕事に行くようにしたほうが良いでしょう。ネガティブな内的会話をすることも構いません。しかしその後、お客さんのところに顔を出す前はポジティブな内的会話を自分の中でして「プラスのプライミング効果」を起こしてからお客さんのところへ向かうようにしたほうが良いでしょう。

具体策:洋書を上手に利用しよう

「プラスのプライミング効果」を起こす方法は無数に考えられます。ただ、もしあなたが現在すでに洋書を使った英語学習をしているのなら、洋書自体をその材料として使えば一石二鳥です。気持ちをポジティブにリセットし、成長しやすい状態を作ることができるだけでなく、それが英語学習にもつながっていきます。audible-smart-phone

まずはあなたがこれまで読んだ中で特に気に入っている洋書をすぐに取り出せるように準備しておきましょう。洋書をそのまま何冊も持ち歩くのは大変なのでAmazonでKindle本を購入し、スマートフォンにダウンロードしておきます。またその本のオーディオブック版もAudible.comなどで購入しスマートフォンにダウンロードしておきます。そして毎朝電車の中でその日の気持ちにピッタリあった洋書のKindle版を開き、読み返すようにするのです。またお客さんのところへ向かう車の中でオーディオブックを流し、プラスのプライミング効果を起こすようにするのです。

たとえば、ごちゃごちゃした仕事を整理する前には “The Power of Less” をインプットしていくといいかもしれません。ちょっと嫌なお客さんのところへ向かう前には “How to Win Friends and Influence People” がピッタリかもしれません。重要な決断をする前には”Decisive”が向いているかもしれません。人前で話をする前には “The Presentation Secrets of Steve Jobs” などが良いかもしれません。ソフィーのクラスに通っている方は、そのクラス前はその日自分が読む洋書のオーディオブックを聞きながら教室へ向かう、というのも良いでしょう。

いずれにしても、意識的にプラスのプライミング効果を使うことで、自分のモチベーションを上手にコントロールし、常に自分の状態を「成長しやすい状態」にしておくことができるようになってきます。「プラスのプライミング効果」を使うタイミングは「何かを始める前」です。
ぜひ意識しながら、できるところから試してみてください。

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