日本のビジネスマンの「MBA」に対する憧れは、まだ根強く残っているようです。しかし、アメリカではMBAに対する手放しの憧憬のような感情はほとんどなくなってきているようです。MBAを取得するということに関してはいくつかのデメリットがあり、それよりももっと良い学びの形が存在するのではないか、と気づき始めている人が増えてきているからのようです。
1.[問題点]MBAの問題点
日本ではまだMBAに憧れのようなものを感じる人は多いようです。しかし、アメリカではMBAに対する無条件のあこがれ、のような感情はかなり薄らぎつつあるようです。
これはひとつにはエンロン事件などで、MBAを所有している人たちが相次いで不正に携わっていたことで、その資格に自体に対する不信感が広がった、ということもきっかけとしてはあるようです。
またそもそも「大学」というものの教育効果に対して疑問を持つ人も増えてきています。
たとえばこんな主張の記事もよく見られます。
entrepreneur.com→ “Do You Really Need a College Degree These Days?” 「今の時代大学って本当に行く必要があるの?」
また、大学の教育が効果をほとんど上げていない、ということを証明する研究も出てきています。たとえば アメリカの高等教育に問題提起をしている良著 “Academically Adrift”の中で著者たちは、2300人の大学生に調査を行ったところその内の45%もの生徒がまったく知的スキルを向上させていないことが明らかになった、と述べています。
さらによく知られていることですが、ビル・ゲイツも、スティーブ・ジョブズなどの成功した起業家たちの多くもMBAは持っていません。それどころかこの2人に関してはどちらも大学に行くすら途中で辞めてしまっています。
もちろんMBAを取得することで得られるメリットもたくさんあるでしょう。しかし同時にMBAの取得には問題点がいくつか存在します。
ごく簡単にまとめると次のような3点を上げることができるでしょう。
【問題1】時間がかかる
海外へ留学すれば丸々2年かかります。最近は日本でも取得できる学校がいくつかありますが、いずれにしても、たいてい丸2年かかります。仮に一度仕事を辞めてMBAの取得のために留学するとなれば、働き盛りの2年間、丸々仕事の現場から離れることになり、大きな機会損失となってしまう可能性があります。
【問題2】費用がかかる
海外で取得すれば、生活費も合わせて2年間で1千万円弱かかると思います。日本で取得できるスクールは2年で300万円程度のところが多いようです。これらの費用は決して安いものではないので、「本当に適切な対費用効果があるのか?」は注意して検討する必要があるでしょう。
【問題3】MBAがどれだけ役に立つかどうかは?である
まったく仕事に役立たない、ということはないかもしれません。ただ「MBAなんて取っても役立たない」と自虐的に言うMBA取得者は、私の知っている限りでも何人かいます。学校によってもカリキュラムや環境が全く違いますので、MBAをひとくくりでは評価できませんが、一般的に日本人がその言葉に抱いているイメージは幻想に近いものがあるのかもしれません。世の中が激しく変化し続けている今、教室で授業を受けて、テストで良い点数を取るための勉強をしても、その知識は社会に出たらもう役立たないものになっている、ということはよくあることなのかもしれません。
2.[解決策]優れたビジネス洋書を自分で選び、仕事ですぐに活かす
ゆっくり時間があり、親が経済的にも余裕がある若者が「海外で数年暮らす」ということを目的としてMBAを取得しに留学するのは、とても良いことだと思います。なぜなら「海外で数年暮らす」ことによって、得られる学びはおそらくたくさんあるからです。
しかし、社会人になったあと、ビジネススキルを上げるためにMBAを取得しようとすることは、上で書いたような理由から、個人的にはそれほどお勧めしていません。
それよりも自分の必要なビジネス洋書を自分で選び、読み、学んだことを実践していく、という方がずっと良い、と思います。
この方法だと、時間はそれほどとられません。もちろん毎日少しずつの時間を割く必要はありますが、一気に膨大な時間は取られません。本なんて学費に比べればずっと安いもの。たとえば1冊3,000円の年間で100冊買ったとしても30万円。100万円から数百万円する学費と生活費に比べれば、お金も圧倒的に節約できます。
◎テストがないから「本当の学び」に集中しやすい
また自分で洋書を選んで読んでいく方法は、何よりテストがないのがいいと思います。テストは、往々にして本来の学びの邪魔になります。
テストがあると、自分の興味や必要がないところも覚えなくてはいけません。でも、自分で洋書を選んで読んでいれば、必要ないところは読む必要はありません。不要なところはすっ飛ばしていいのです。
テストがあると、勉強は次第にテストのための勉強になっていってしまいます。そして重要語句を覚えることに気が行ってしまいます。本当は得た知識を仕事や誰かのために使って活かすことが重要なのに、それは二の次になっていってしまいます。
また、成績もつけられません。成績をつけられると、その評価が気になってしまい、本当の学びとは違うところに意識が行ってしまいます。本当の学びをはかるポイントは「その知識があなたの役に立ったか?」もしくは「その知識が誰かの役に立ったか?」であり、「たくさんのことを覚えたか?」や「よい論文を書いたか?」ではありません。
本当の意味での学びの評価は、知識を実践してみた結果、現実があなたにフィードバックしてくれるものです。だから本当は、あなたの学びを誰かに評価してもらう必要なんてないのです。
◎どんどん好きな洋書を「選ぶ」ことが、「あなたらしい知識」を身につけるには大事
そして実は、好きな洋書を自分で「選ぶ」という行為が非常に重要です。
「選ぶ」ことによって、あなたの知識体系はあなたにしかないものになっていきます。「あなたしか持っていない知識体系」が頭の中に出来上がるのです。
MBAで100人でほぼ同じカリキュラムを受け、みんなで同じ教科書を読んでも、100人の同じ知識体系がインプットされ、頭の中に蓄積されるだけで、「あなたしか持っていない知識体系」はほとんどどこにもありません。
「他と同じもの」は市場の中では価値が低くなります。
しかし、自分の興味に応じて洋書を「選ぶ」ことを続けることにより、その知識の組み合わせはどんどんオリジナルになっていきます。だからこの方法のほうが圧倒的に「人材としての市場価値」が高くなるわけです。
(このあたりのこと、さらに詳しくは過去の記事『自分らしい英語が話せるようになる方法→「選択の自由メソッド」』で書いてあります。)
好きな洋書をガンガン選んで買っていっても、MBA取得の費用に比べれば、そんなにお金はかからないはずです。
洋書を読む方法はこのブログ内で公開していますから、参考にして挑戦してみたらいかがでしょう?意外とやってみたらすぐに読めるようになっちゃった、という人は多いです。