近頃は中東の紛争やテロなど物騒なニュースが続きます。そんな中「どうしてこういうことが起こるのだろう」とか「自分に何かできることはないのだろうか」などと考える機会も増えているかもしれません。そこで今回は、こういう時だからこそぜひ読んでほしい洋書をソフィーの洋書テキストの中から厳選して紹介します。
【問題点】テロや紛争のニュースに無力感を感じてしまう
テレビのニュースで流れるテロや紛争のニュースを見ていると、私たちは不安や悲しみを感じると同時に、しばしば無力感を感じてしまいます。「私に争いを止めるために何かすることはないだろうか?」と一瞬考えてみるものの、結局何も思いつくことができず「私には何もすることができない」と思い、途方に暮れてしまったりするのです。
でも、本当に私たちは無力なのでしょうか?紛争を止めるために私たちができることって何かひとつでも小さなことでも存在しないのでしょうか?
【解決策】明るい未来を見つけるために優れた洋書を読むべし
実は自分から遠い世界にあってとても影響を及ぼすことができない場所の争いでも、少なくとも同じ地球上にあって経済的につながっている社会であれば、私たち1人1人にできることというのは数多くあります。
では私たちにできることって例えばどんなことがあるのでしょうか?
それを教えてくれる本はいくつかあります。特に英語の本の中には見事にその解決策や解決へのヒントを示してくれている名著が私の知る限り何冊か存在します。これらの本を読み、著者の叡智を理解し吸収すれば、現代のような混沌とした状況にあっても未来は決して暗くない、ということがわかります。
今回はそんな英語の名著を全部で9冊紹介してみましょう。
1. The Starfish and the Spider
1冊目はこれ。すべての組織を「クモ型」と「ヒトデ型」の2種類に分類し、それぞれの長所と短所を説明している本。これを読むと国や政府はまさに「クモ型」で、テロ組織は「ヒトデ型」であることがよくわかる。そして私たちがヒトデ型の組織であるテロ組織に対して具体的に何をしていくべきなのか、もしくは何をしないべきなのかがハッキリわかってくる。
また、自分がリーダーシップをとっている組織やその他の組織がどちらの分類に当てはまる組織であるのかも見分けられるようになる。そしてどうすればその悪いところを弱め、良い部分を強めていけるのかのヒントが見つけられるようになる。
2. Getting to Yes
こちらは交渉学の古典的名著。良い交渉を行うためには立場を超えた利益を見いだすことが必要であると説いている。そして「具体的にどうすれば立場を超えた利益を含む案を見つけることができるか」や「どうすれば相手の心を開くことができるか」などの具体的で実践的な手法が紹介されている。ビジネスにおける交渉にはもちろんのこと国同士やテロ組織などとの交渉においても十分実践的であり、世界 がますます狭くなっていく今後の世の中に生きていく私たちにとって必読書である、と言っても良いと思う。
3. Getting Past No
名作“Getting to Yes”の続編で、この本がまた素晴らしい。映画でも本でも続編は前作よりも質が落ちることが多いがこの本に関してはそれは全く当てはまらない。前作は比較的相手がそもそも「交渉の余地がある」という姿勢を持っているケースを扱ったが、この本は相手がよりはじめから「交渉の余地はない」と交渉内容に関して強行に”No”と言っているようなより難しい状況で何をすべきかを教えてくれている。この本を読めば、もう打つ手がまったくないように見える時でも、実はやるべきことはたくさんあることがわかる。そしてたとえば現代の中東のように紛争状態にありまったくどうしようもないように見える状況でも、できることはいくつもあることがわかる。
4.Naked Economics
戦争や紛争・テロは経済的な事情が背景にあることは多いので、経済に関する基本的な知識を頭に入れておくことは、あらゆる紛争の原因を理解するのに必ず役に立つ。そして経済の基礎的知識を頭に入れるのに最適なのがこの1冊。数式やグラフは全く使わずに、ストーリーや身近な例えを使いながらわかりやすく経済について教えてくれる名著。
特にChapter6の”human capital”に関する説明部分は秀逸で、このあたりの経済的知識の理解が世界にもっと広まれば、戦争などは地球上からなくなってしまうだろう、とすら思える。
5. Leadership and Self-Deception
私たちのほとんどがハマってしまう人間関係の中に潜むワナを物語形式でわかりやすく描いた良著。その人間関係のワナをこの本では「箱」と名付け、真のリーダーになるためには、まずそのその「箱」から出ることが重要であると説く。この本を読むと「国vs国」や「国vsテロ組織」の争いごとも、基本的に人間関係と同じく「箱」の中で起こることであり、その悪循環を断ち切るためには、そこからお互いにまずは出ることが重要であるということがわかってくる。ちなみに続編の”The Anatomy of Peace”はより具体的に人間関係の「箱」が地続きに国レベルでの「箱」に影響している、ということを説明してくれている。合わせて読むと最強。
6. Bonds that Make Us Free
「箱」の本、“Leadership and Self-Deception”や”The Anatomy of Peace”を読んで、「もっと深く知りたい」と思った人にぜひお勧めしたい本。他の2冊は物語形式だが、こちらはその内容を論理立てて体系的に説明してくれている。個人的にはこの本は数多く読んできたコミュニケーションに関する本ではもっとも感動した本。人間関係の問題点と解決策をこれほどまでに理路整然とわかりやすく、しかも心に響くストーリーを交えながらまとめあげている本は他にないと思う。人間関係も国同士の関係も結局の構造は同じなので、この本を読んで人間関係の改善に取り組んでいくうちに、国際関係の構造がより深く理解できるようになっていくだろう。
7. Switch
次々とベストセラーを世に出しているハース兄弟による「変化が難しい状況に変化を起こすための方法」を体系的にまとめあげた本。この本を読めば、変化が難しいと考えられる状況の中で目覚ましい変化を起こした事例というのが、意外と数多く世の中に存在していることがわかるはず。そしてそれらの事例から共通点を見いだし、現代のような混沌とした世界状況の中で、自分が置かれている場所から具体的に何をすれば良いのかが少しずつ見えてくると思う。たくさんの事例がストーリーとして紹介されているので、単純に読み物としても十分に楽しめる。
8. Justice
以前NHKの『ハーバード白熱教室』で有名になったマイケル・サンデル氏による「正義論」。世の中ではいろんな立場の人がいろんな「正義」を主張する。しかしそれがあまりに多様なため、私たちはしばしば何が正しいのか全くわからなくなってしまう。この本はそんな私たちに多様な「正義」も大まかに分類すればたった「3種類」に分けられることを教えてくれていて、その分類によって無数にある見方を自分なりに整理して理解していくことを可能にしてくれる。混沌とした世界状況の中にあってもそれぞれの人の立場やそこからの見解が理解できれば、それに対して何をしたらいいのかが見えやすくなってくるはず。
9. One
大きな世界の問題に対して、私たちは「自分1人の力では何もできない」と無力感を感じてしまいがち。しかしこの本は、世界のどんな変化もたった1人が何かを始めるところがスタート地点である、といういことを教えてくれる。1人であることは1人であるがゆえに力強く、大きな世界問題に対して私たち1人1人が今すぐ始められることが、実はたくさんあるかもしれない、という気持ちにこの本はさせてくれる良い言葉がいっぱいつまっている。理屈っぽい本をたくさん読んで頭でっかちになったとき、この本を読めば「ハートでっかち」になり、思い切った1歩を踏み出せるようになるはず。
【結論】不安や恐怖は無知から来るもの。優れた洋書を読めば道は見えてくる!
不安や恐怖は往々にしてその状況や原因をよく知らないから感じてしまうものです。不安や恐怖の対象の詳細がよくわかってしまえば、たいていの場合それはあまり怖いものではなくなってしまいます。
テロや紛争はもちろん怖いものではありますが、解決策がまったく存在していないようなものではありません。その解決策自体はすでに多くの書籍の中で示されているのです。あとは私たち一人一人がその方法を知り、一人でも多くの人がそれを実践していけば良いのです。無駄に恐怖だけを感じ続けている必要はありません。毎日地道にでもできることはあるのです。
もしこれらの本の中に心が引かれるものがあれば、ぜひまずは一冊読んでみてください。そして興味がつながれば、何冊か続けて読んでみましょう。何冊か読み進んでいるうちにこの混沌とした現状の中で私たちができることは実はたくさんあり、もしかすると一見不安に見えるこの世の中の状況は、大きな希望やチャンスに満ちた状況なのかもしれない、と思えてくるかもしれません。