日本語の経済入門書はいくら読んでも逆に余計に訳が分からなくなってしまうものが多いが、英語の本にはわかりやすく優れたものが多い。私も元々経済に関しては無知に近かったものの、数年前のリーマンショックの後に1年くらいまとめて経済の洋書を読みあさったら、最近はだいぶ重要なところは見えるようになってきた感じがする。今回はその洋書で得た基礎的な経済知識をもとに経済の素人なりに考えた、最近の日本経済についてのある仮説を紹介したい。
2016年の国家予算に関するニュースを聞いて思い出したこと
先日2016年の国家予算案のニュースがあった。96兆円と過去最高の予算額だそうだ。
『来年度予算案 96兆円台で詰めの調整に NHKニュース』(2015年12月18日)
財政赤字が続いているのに、支出額を増やすなんて普通じゃない。借金で困っていたら、出て行くお金を減らそうとするのが普通だと思うが、ちょっとびっくりである。同じように感じた人は多いはずだ。
このニュースを聞いて思い出したことがあった。
数年前リーマンショックの後のことだ。たぶん多くの人がそうだったように、私も当時、経済についていろいろと考えた。私はこのブログページがあるソフィー・ジ・アカデミーという塾と英会話スクールを運営している会社の他に、私の父から引き継いだ地元の工場に工具などを販売している会社も経営している。ソフィー・ジ・アカデミーはこういう景気の急落に対する反応は比較的遅く、少ない。しかし、工具販売の会社は大きな影響を受けた。リーマンショックで株が暴落した次の日に売り上げが半分になる、というような衝撃だった。
リーマンショックがきっかけで経済の洋書を読みあさり、あることに気付く
この出来事は私に「そもそも経済って何?」とか「そもそも景気って何?」「お金って何?」ということを根本から調べ、考えさせてくれるきっかけとなった。そして様々な経済の本を読んだ。たとえば“Naked Economics”, “Economics in One Lesson”, “Basic Economics”, “Free to Choose”など、経済の名著と呼ばれる洋書を1年くらいの間に集中して読み、考え続けた。
その結果、わかってきたことはたくさんあって、ここには書ききれない。ただ、ひとつここで書けることは、今回の国家予算案の発表に関連したことだ。具体的には、「政府のお金の使い方とアルコール中毒との関連性について」である。
ちょうど偶然に、アルコール依存症の定義について調べてみた
私はちょうどそのとき経済とは全く関係がない別の洋書を読んでいて、その本にアルコール中毒の話が出てきていた。読んでいた本は確か習慣に関する本で、その本のある部分で「アルコール中毒のような悪習慣から抜け出るにはどうしたら良いか?」ということについての成功事例が紹介されていたりした。その時にインターネットで「アルコール中毒の定義」について調べてみた。お酒がすごく好きなだけの人と、アルコール中毒の人との境目ってどこにあるんだろう?と思ったので、それを定義している人や団体がきっとあるのではないか、と思ったのだ。
そして出てきたのが次の定義。これは東京都福祉保健局の東京都立中部総合精神保健福祉センターで配布している『アルコールのはなし あなたの大切な人の飲み方気になりませんか?(PDF:1,539KB)』というリーフレットに載っている「アルコール依存症の診断基準」。「次のような症状が家族などに見られたら、その人はアルコール依存症の可能性が高いですよ」という診断基準である。もともとはWHOが定義した依存症全般に適用できる基準がもとになっているもののようだ。
アルコール依存症の診断基準
読みやすいように抜粋してみよう。
- 「今日だけは飲まない!」と約束をするにもかかわらず、アルコールを飲んでしまう。(コントロールの消失)
- 以前のアルコール量では酔えないため、より沢山飲むようになった。 (耐性の上昇)
- 健康や仕事に悪い影響があると周りから言われているがアルコールを止める様子がない。(強迫的飲酒)
- 本人は飲み方のおかしさを周りの人に相談できない。飲み方を指摘されると怒ったり、言い訳したり、はぐらかしをしたり、問題を認めない。 (否認)
- アルコールを2〜3日飲まないと不快な症状(手の震え、大汗、イライラ、不安)が出て、また飲んでしまう。 (離脱症状軽減の飲酒)
- 健康を害しても、仕事や社会生活上で失敗をしても飲むことを止めない。一般病院に入院中の患者は2割以上が、飲酒が原因で発病し悪化をくりかえしている。 (害を知りながらの飲酒)
- 生活全般が飲酒第一優先となる。「どのようにしたら非難されないで飲めるか」を考え行動し、あらゆる方法でアルコールを手に入れ周囲を失望させる。(飲酒パターンの狭小化とアルコール探索行動)
ちょうど経済についてどっぷり1年弱考察してきた私は、この文章を見てちょっと驚いた。なぜかというとこれが現代の政府のお金との関係を表したように見えてしまったからだ。
アルコール依存症の診断基準を政府のお金依存症バージョンに直してみる
わかりやすいように、試しにこのアルコール中毒の診断基準に少し手を加えて、政府とお金の関係を表すように直してみる。
- 「今年こそは無駄な支出を削減をする!」と約束をするにもかかわらず、結局削減できない(コントロールの消失)
- 以前の金額では効果が出ないため、より沢山使うようになった。 (耐性の上昇)
- 国や社会に悪い影響があると周りから言われているがお金の乱用を止める様子がない。(強迫的なお金の使用)
- 本人は金づかいのおかしさを周りの人に相談できない。使い方を指摘されると怒ったり、言い訳したり、はぐらかしをしたり、問題を認めない。 (否認)
- お金の使用を減らすと不快な症状(手の震え、大汗、イライラ、不安)が出て、また使ってしまう。 (離脱症状軽減のためのお金の使用)
- 自分の身や政党に害を起こしても、仕事や社会生活上で失敗をしても飲むことを止めない。多くの政治家が、過度のお金の使用が原因で発病し悪化をくりかえしている。 (害を知りながらのお金の使用)
- 政治全般がお金第一優先となる。「どのようにしたら非難されないでお金を使えるか」を考え行動し、あらゆる方法でお金を手に入れ周囲を失望させる。(お金の使用パターンの狭小化とお金探索行動)
さらによりわかりやすくするために表にしてみる。
「今日だけは飲まない!」と約束をするにもかかわらず、アルコールを飲んでしまう。(コントロールの消失) |
「今年こそは無駄な支出を削減をする!」と約束をするにもかかわらず、結局削減できない(コントロールの消失) |
以前のアルコール量では酔えないため、より沢山飲むようになった。 (耐性の上昇) |
以前の金額では効果が出ないため、より沢山使うようになった。 (耐性の上昇) |
健康や仕事に悪い影響があると周りから言われているがアルコールを止める様子がない。(強迫的飲酒) |
国や社会に悪い影響があると周りから言われているがお金の乱用を止める様子がない。(強迫的なお金の使用) |
本人は飲み方のおかしさを周りの人に相談できない。飲み方を指摘されると怒ったり、言い訳したり、はぐらかしをしたり、問題を認めない。 (否認) |
本人は金づかいのおかしさを周りの人に相談できない。使い方を指摘されると怒ったり、言い訳したり、はぐらかしをしたり、問題を認めない。 (否認) |
アルコールを2〜3日飲まないと不快な症状(手の震え、大汗、イライラ、不安)が出て、また飲んでしまう。 (離脱症状軽減の飲酒) |
お金の使用を減らすと不快な症状(手の震え、大汗、イライラ、不安)が出て、また使ってしまう。 (離脱症状軽減のためのお金の使用) |
健康を害しても、仕事や社会生活上で失敗をしても飲むことを止めない。一般病院に入院中の患者は2割以上が、飲酒が原因で発病し悪化をくりかえしている。 (害を知りながらの飲酒) |
自分の身や政党に害を起こしても、仕事や社会生活上で失敗をしても飲むことを止めない。多くの政治家が、過度のお金の使用が原因で発病し悪化をくりかえしている。 (害を知りながらのお金の使用) |
生活全般が飲酒第一優先となる。「どのようにしたら非難されないで飲めるか」を考え行動し、あらゆる方法でアルコールを手に入れ周囲を失望させる。(飲酒パターンの狭小化とアルコール探索行動) |
政治全般がお金第一優先となる。「どのようにしたら非難されないでお金を使えるか」を考え行動し、あらゆる方法でお金を手に入れ周囲を失望させる。(お金の使用パターンの狭小化とお金探索行動) |
こうやってみると「政府や多くの政治家は『お金依存症』という中毒症にかかっている」と言い切ってしまっても良いのではないか、という気がしてくる。
あなたはどう思うだろうか?
まとめ
アルコール依存症を治すのは簡単ではない。でも、方法はある。そして治すための第一歩が「まわりの人の認識」、そして第二歩目が「本人の自覚」である。まずはまわりの人がその人は「アル中である」と認識し、そのサポートをもとに最終的に自分が「アル中である」と自覚する、というステップが依存症から抜け出る初期段階ののステップなのだ。
そう考えると、もし政府が「アル中」であるとしたら、私たちが最初のステップとしてできることは、私たちが「政府がアル中である」ということを認識することになるのかもしれない。
追伸1: この記事はあくまで経済の素人の仮説です。この仮説が読者の思考のきっかけにするのが目的です。
追伸2: ソフィーでは定期的に経済に関する洋書を読む短期講座などを開催しています。短期講座は現在は停止していますが、通学コースおよび通信コースの正規講座では受講可能ですので、興味があればぜひ受講をご検討ください。