先日の「おススメ洋書」の記事の中で紹介した、『ハーバード流交渉術』の原書”Getting to Yes”。
この中の一部、面白い部分を抜粋してちょっと読んでみましょう。
サポートしながら、スモールステップでちょっとずつ前に進めていくので、英語力に自信がなくても大丈夫。
まずは原文を読んでみます。
ここでは「読む」というよりは、「眺める」という感じでOK。もしかすると最初は英語が「目をはじく」ような感じかもしれませんが、それはそれで大丈夫です。
P.42の3〜12行目からの抜粋です。
【STEP1 原文のチェック(1)】
Consider Mary Parker Follett’s story of two men quarreling in a library. One wants the window open and the other wants it closed. They bicker back and forth about how much to leave it open: a crack, halfway, three-quarters of the way. No solution satisfies them both.
Enter the librarian. She asks one why he wants the window open:“To get some fresh air.” She asks the other why he wants it closed:“To avoid the draft.”After thinking a minute, she opens wide a window in the next room, bringing in fresh air without a draft.
【STEP2 重要表現チェック】
この抜粋文の中から1つだけ単語をチェックしておきましょう。抜粋文中下最終行とその前にある”draft”です。
“draft”は「原稿」や、プロ野球などの「ドラフト会議」、生ビールの「生」の意味など、いろいろな意味を持った単語ですが、ここでの意味はそれらのどれにもあてはまりません。
ここでは「すきま風」という意味で使われていて、それがこの抜粋分に出てくる二人の争いんお種になっています。
ではこの単語表現を頭に入れながら、今度は訳付きの文章を読んでみましょう。
【STEP3 訳付文チェック】
Consider Mary Parker Follett’s story
/メアリー・パーカー・フォレットのお話を考えてみましょう/
of two men quarreling in a library.
/二人の男が図書館で喧嘩をしている/
ne wants the window open
/一人の人は窓を開けたがっていて/
and the other wants it closed.
/そしてもう一人はそれ(窓)を閉じたがっています/They bicker back and forth
/彼らは堂々巡りの口論をしました/
about how much to leave it open
/どの程度窓を開けておくかについて/
: a crack,
/ほんの少しだけ/
halfway,
/中間/
three-quarters of the way.
/4分の3くらい/No solution satisfies them both.
/双方を満足させる解決策はありませんでした/Enter the librarian.
/図書館員が入ってきます/She asks one
/彼女は一人の人に尋ねました/
why he wants the window open: /なぜ彼は窓を開けたがっているのか/
“To get some fresh air.”
/新鮮な空気を得るため/She asks the other
/彼女はもう一人に尋ねました/
why he wants it closed:
/なぜ彼は窓を閉めたがっているのか/“To avoid the draft.”
/すきま風を避けるため/After thinking a minute,
/少し考えた後/
she opens wide a window
/彼女は窓を大きく開けました/
in the next room,
/隣の部屋の/
bringing in fresh air
/新鮮な空気をもたらす/
without a draft.
/すきま風なしに/
ここに出てくる図書館の二人が行っているは、典型的な「立場をめぐる綱引き」型の交渉(または、ケンカ)です。
お互いに「窓をどれくらい開けておくか」という交渉の実質的中身と、それをめぐるお互いの立場しか見えていません。
それしか見えていないがゆえに、言い争いは堂々巡りとなり、収拾がつかなくなってしまっています。
家族同士、友達同士、職場の人間関係、企業同士の取引において、もしくは国際関係においても、このような状況に陥ってしまい、にっちもさっちもいかなくなっているように見える状況、しばしば目にします。
こういう状況から抜け出すためには、もしくはこういう状況にそもそも陥らないためには、いったいどうしたらいいのでしょうか?
もう一度原文を読んでみます。
【STEP4 原文チェック(2)】
Consider Mary Parker Follett’s story of two men quarreling in a library. One wants the window open and the other wants it closed. They bicker back and forth about how much to leave it open: a crack, halfway, three-quarters of the way. No solution satisfies them both.
Enter the librarian. She asks one why he wants the window open:“To get some fresh air.” She asks the other why he wants it closed:“To avoid the draft.”After thinking a minute, she opens wide a window in the next room, bringing in fresh air without a draft.
泥沼化したケンカを続ける図書館の二人の間に、図書館員が笑みをたたえて現れます。(「笑み」の部分は私の想像です)
そして「そもそもお互いに何を求めているのか?」を聞き出します。
すると一人は「新鮮な空気」を求めていることがわかり、もう一方は「すきま風を避ける」ことを求めていることがわかります。そこで図書館員はにこやかに(想像です)隣の部屋に行き、窓を開け、こちらの部屋の窓を閉めるのです。
これで「新鮮な空気」を室内に入れつつ、「すきま風を避ける」ということが可能となり、すべて丸く収まったわけです。
お互いの交渉やコミュニケーションがうまくいっていないとき、ほとんどの場合、「立場をめぐる綱引き」を行ってしまっています。
綱引きは、片方が勝てば片方は負けます。こういうゲームはお互いに力を消耗するだけで、長期的にはどちらもほとんどメリットはありません。
そこで、ここで図書館員がしたように、交渉の実質的内容や、お互いの立場をいったん脇に置いてしまい、「そもそも何を求めているのですか?」とお互いに聞きあったり、自問しあってみたり、第三者に聞いてもらったりするのです。
そうすると意外とお互いに求めているものはぶつかり合うようなものではない、ということがわかったりします。ぶつかり合うよりも、協力し合ったほうが、何倍も良い、ということに気づけたりします。
まずはあなたのまわりの誰かを観察してみましょう。
家族の中や会社の中でいがみ合っている人たちはいないでしょうか?もしくは会社同士で交渉が難航している例はないでしょうか?場合によっては国同士でのもめごとを見てみてもいいかもしれません。もめている、ということは「立場をめぐる綱引き」に陥ってしまっている可能性が高いです。
両者が本当に求めているものは何なのでしょうか?お金?愛情?メンツ?平和?経済的発展?いろいろと想像してみてください。
お互いに求めているものが想像できると、この抜粋文の例のようにちょっと前には想像もできなかったような、でも一度思いついてしまえば「どうしてそんなこと誰も気づかなかったんだろう?」と不思議に思うような、「奇跡の解決策」が見つかったりします。ぜひ、身の回りをいろいろと観察し、考察してみてください。
以上、”Getting to Yes”の一部を一緒に読んでみました。いかがでしたか?最初、原文を読んだとき【STEP1 原文のチェック(1)】よりも、最後に原文を読んだとき【STEP4 原文チェック(2)】に、少しでも前より読めている感じがあったら大成功。さらに、この文章から新しい行動やアイデアを思いついたのなら言うことはありません。
こういうプロセスを繰り返していくと、次第に読めるようになっていきます。少しでも原書を直接読むことの楽しさを感じてもらえたなら、うれしいです。
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